「ちょうどいい」が重なっていくまち、古賀|kivi店主永谷眞子さん

古賀駅に降り立つと、まず感じるのは不思議な安心感です。大きすぎず、静かすぎず、気取らない…古賀駅西口商店街を歩いていると、「このまち、なんだか居心地がいいな」と自然と思わされます。そんな感覚を象徴するような場所が、商店街の一角にあります。花とナチュラルワインを楽しめる店『kivi(キヴィ)』です。この店を起点に見えてきたのは、「古賀って、すごく暮らしやすい」という、まちそのものの魅力でした。

「なんだか心地いい」古賀という場所

-永谷さんは、もともと古賀のご出身ではないんですよね。

永谷さん:はい。福岡市南区の出身で、現在も福岡市東区に住んでいます。正直に言うと、近くに引っ越してくるまでは古賀の事をほとんど知りませんでした。

-そこから、お店をオープンすることになったきっかけは何だったのでしょうか。

永谷さん:もともとお酒が好きで、特に福岡の立ち飲み文化がすごく好きなんです。「家の近くでいい酒屋さんは無いかな」と探していたときに見つけたのが、kiviの目の前にある『ノミヤマ酒販』でした。

そこで友人と飲んでいるときに店主の許山(のみやま)さんとお話しする機会があり、昔花屋で働いていたことなどを話していくうちに、「じゃあ、目の前の物件で花屋をやってみたら?」と声をかけていただいたんです。

-かなりとんとん拍子ですね。

永谷さん:はい。もう断る理由が思いつきませんでした。尊敬している許山さんからのお誘いでしたし、「楽しそう!」「やってみたい!」と、かなり直感的でしたね。以前、Instagramで“花屋さんでお酒が飲めるお店”を見かけて、「素敵だな」と思ったことを思い出しました。

-お花とワインというアイデア、とても素敵ですね。

永谷さん:お花とワインというと、なぜか「とがったお店」と思われることも多くて…実際は全然そんなことはないんですけどね(笑)。私自身お酒も好きですし、純粋に「好きなもの同士」を掛け合わせたお店をやってみたいと思い、たどり着いた組み合わせです。

店を開くことで見えてきた、商店街の風景

永谷さんがkiviをオープンしたのは、古賀駅西口商店街の複合施設『GOJŌ』。ドライフラワーが天井から優雅に下がり、野生的な枝物や葉ものが並ぶ店内では、グラス片手に花を選びながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

-お花やワインのセレクトには、どんなこだわりがありますか?

永谷さん:kiviで提供しているワインは、すべてナチュラルワインです。癒されるような、やさしい味わいのワインが好きで、すっと飲める軽やかなものを選んでいます。お客さまと「おいしい」が共感できる時間が本当に幸せですね。kiviで気に入ったワインは、ノミヤマ酒販でも購入していただくことができます。
お花については、自分の好みと、お客様から要望の多い「日持ちするお花」を、バランスよく織り交ぜながらセレクトしています。ドライフラワーは、店内の天井に吊るして自然乾燥させています。

-商店街の中でお店を続けていく中で、どんな関係性が生まれていますか?

永谷さん:そうですね。おつまみを持ってきてくれるお店があったり、イベントがあれば宣伝を手伝ってくれたり、人をつないでくれたり。本当に、商店街の方々に助けられながら運営しています。「次はあそこの店に行ってみたい」と商店街や近場のお店を開拓しています。

-商店街全体で見守っている感じがありますね。

永谷さん:古賀には、新しいものを受け入れる“余白”があるまちだなと感じています。

新しい人と、昔からの人が、同じ場所にいる

-実際にお店をオープンしてみて、古賀の印象は変わりましたか?

永谷さん:「正直、商店街でお店をするというのは人付き合いが大変そう」というイメージもありました。でも実際に来て、時間を過ごしてみると、印象はまったく違いました。人との距離は近いけれど、近すぎず、干渉しすぎない。そのバランスが、すごくちょうどいいなと思ったんです。

-kiviには、どんな方がいらっしゃいますか?

永谷さん:年齢層は本当に幅広いですね。ワイン好きの方だけでなく、90歳のおばあちゃんが仏壇用のお花を買いに来られて、包んでいる待ち時間に一杯飲んでいかれることもあります。

-店内でお客さん同士の交流が生まれることもあるんですか?

永谷さん:こぢんまりとした店内なので、自然と生まれますね。新しく来た人も、昔から暮らしている人も、無理なく同じ空間にいられるまちだなと感じます。「初めて来ました」と伝えると、会話が自然にひらいて、気づけばこのまちのことを教えてもらっている。古賀は、人との距離がとてもやさしいまちだと思います。

-古賀のそんなやさしい空気感は、kiviのスタンスとも重なっているように感じます。

永谷さん:そうですね、古賀では、新しいお店や取り組みが生まれても、一気に盛り上げて消費する、という感じはあまりありません。「続けられるかどうか」「このまちに合っているかどうか」を、みんなで静かに見守っている印象です。流行らせたいというよりも、ちゃんと好きになってくれる人が増えたらいい。それはkiviの考え方でもあり、古賀というまち全体にも通じている気がします。

古賀は、「住む理由があとから増えていく」まち

-最後に、永谷さんにとって古賀はどんなまちですか?

永谷さん:古賀は、最初から強烈な魅力を押し出すまちではないと思います。でも、住んだり、通ったり、関わったりするうちに、「ここ、いいな」と思う理由が、少しずつ増えていくまちです。
人との距離感。商店街の存在。回遊できる日常。新しい人を受け入れる空気。kiviは、その一部を切り取った場所にすぎませんが、地域の“ハブ”として、人と人、店と店をゆるやかにつなぐ存在でありたいと思っています。
この店を通して見えてくるのは、「古賀って、実はこんなに居心地がいい」という事実です。もし福岡で「ちょうどいい暮らし」を探しているなら、古賀という選択肢は、きっと思っている以上にしっくりくると思います。実は私自身も、いつかは古賀に住みたいな、と密かに思っています。


永谷さんのお話を通して見えてきたのは、古賀というまちが持つ、肩の力の抜けた心地よさでした。人との距離は近いけれど、踏み込みすぎない。新しい人も、昔からの人も、無理なく同じ場所にいられる。商店街には暮らしの延長としての時間が流れ、気づけば自然と次の場所へと足が向かいます。派手な魅力を前に出すまちではありませんが、関わるほどに「いいな」と思う理由が増えていく古賀。

kiviは、その日常の一部として、人と人、店と店をゆるやかにつなぎながら、まちの居心地のよさをそっと映し出しています。福岡で“ちょうどいい暮らし”を探している人にとって、古賀は、「ここで暮らす」という選択を、無理なく思い描けるまちです。