古賀市青柳町で雑貨店「sorajima.」を営む大沼加恵さん。ハンドメイド作家として活動しながら、お店を地域に根ざしたコミュニティの場にしようと奔走中です。作家の作品販売にとどまらず、イベントやワークショップも開催し、地域の人々が集う憩いの場として親しまれています。
そんな大沼さんに、古賀市の魅力ややってみたいことについて伺いました。
行動すれば、何かが得られると感じた若者時代

-大沼さんの出身はどちらですか?
出身は飯塚市です。20歳まで飯塚市で暮らしていましたが、東京への憧れが強く、仕事を辞めて神奈川県に住む兄のもとへ移りました。神奈川での滞在は半年間で、その間アルバイトで生計を立てていました。
-神奈川から福岡に戻ってきた後、何をされていたのですか?
飯塚市の隣町、小竹町役場で臨時職員として働いたり、派遣社員として事務の仕事をしたりしていました。その派遣先の東京支社の方と結婚することになり、念願の東京暮らしが実現しました。妊娠を機に、子育てのことを考えて千葉県に引っ越しました。
ところが、里帰り出産で福岡に帰省した翌日に東日本大震災が発生したのです。夫も一緒に福岡に来ていたため、震災の混乱で千葉に戻れず、結局夫は異動という形で福岡で働くことになりました。

-出産・育児だけでも大変なのに、震災後の片付けも加わり、相当苦労されたのではないですか?
混乱が落ち着いた後、夫が千葉に戻って片付けをしてくれました。子どもが生後3か月くらいになってから、私も引っ越し準備のために千葉へ行きました。千葉と福岡を行き来するのは大変でしたが、実家の近くで子育てができるようになったおかげで、育児の不安はかなり和らぎましたね。
-現在、古賀市青柳町でハンドメイド作家・委託販売店をされていますが、東京にいた頃から作家活動をされていたのですか?
ものづくりに目覚めたのは2015年、二人目の子どもが1歳になった頃です。その時はすでに福岡に戻っていました。編み物の経験を生かし、子どもにどんぐり帽子を作ったことがハンドメイド作家としての第一歩となりました。

趣味で始めた編み物作品を年に2、3回のイベントで販売するうちに、徐々に作家活動へと発展していきました。イベントスタッフとして委託販売にも携わり、マルシェで他の作家さんと交流する中で、自分も作家活動に本腰を入れたいという思いが芽生えてきたのです。
当初は事務の仕事と並行して活動していましたが、2020年頃に独立を意識し始めましたね。
-人との触れ合いの中で、今のお仕事が生まれていったのですね。その後はどのように展開していったのでしょうか?
実は、作家活動と並行して「カラーリスト」と呼ばれるパーソナルカラー診断などのコンサルティング業もしていました。
しかし、カラーリストの仕事は自分に完全にフィットするとは言えず、本業にするか悩んでいる中で作家活動こそが本当にやりたいことだと気づいたんです。

そこで作家活動に本腰を入れ始めたのですが、自分の作品を置きたい委託販売店が定員オーバーで置けず、なかなか軌道に乗りませんでした。そこで「委託販売店がなければ自分でつくればいい」と発想を転換し、自ら店舗を立ち上げるに至ったんです。
―大胆な決断でしたね。ご主人は応援してくださいましたか?
夫は基本的に私のやりたいことに反対しない性格なのですが、さすがに資金面で不安があったようです。そこで、税理士さんのアドバイスを受けながら売上計画書を作成し、何度も説明を重ねて夫の理解を得ていきました。
-販売場所、キッチン、レンタルスペースがあり、とても広い店舗ですが、どのように探されたのですか?

この店舗はインターネットで探しました。賃料と広さが条件でしたが、なかなか条件に合うテナント物件が見つからず苦労しました。それでも粘り強く探し続けた結果、運良く出会えたんです。元々個人商店兼住宅として建てられた建物だったので、少しの改装で使用できました。
申し込み者が多かったようで、テナント使用にあたり事業内容の提出が必要でした。私は事業内容に加えて、熱意や思いを込めた文章を書き、青柳町を盛り上げたい意欲も伝えました。そうしたら、ありがたいことにオーナーさんが選んでくださったんです。

-内装はきれいに仕上がっていますが、改装はどのようにされたのでしょうか?
改装は、できる限り自分たちでおこない、費用を抑えました。床や外壁は自分たちで塗装し、壁のボード貼りも夫や友人の助けを借りて完成させました。
夫が電気工事の技術があったため、電気関係は全て任せました。業者さんには、クロスの張り替えと畳からフローリングへの変更のみをお願いしました。
業務用キッチンを用意し、菓子製造許可も取得して、腰を据える覚悟でお店を運営しています。




お店づくりの過程で知った“青柳町の人の良さ”
-「腰を据える覚悟で」とのことですが、何歳まで続けたいといった目標はありますか?
年齢制限は設けていませんが、”まちに根差したお店”を目指しています。地域の方が楽しく過ごせ、ご近所さんと交流できるお店にしたいので、無理のない範囲でずっと続けたいですね。
来店されたお客様がくつろげるよう、椅子やテーブルを用意し、飲み物もご提供しています。

青柳町はお店が少なく、特に当店の周辺にはお店がありません。まちの方々は、にぎわいの場所ができたと本当に喜んでくださっています。そういう姿を見ていると、ずっとお店を続けたいという気持ちが強くなりますね。
-地域の方々から応援されてお店づくりができたのは素敵だと感じました。古賀市でお店を営み始めた頃に感じたことは何かありますか?
古賀市青柳町は、周辺の市町村と比べてテナント料が低く設定されており、お店を始めたい方にとって良い環境だと思います。
また、古賀市には自営業の方や新しいことに挑戦したい方が集まるイベントが豊富で、人脈づくりや知識習得の機会が多いのはありがたいですね。

さらに、地域の方々がとてもあたたかく、優しい人が多いと感じました。改装中にお隣さんが声をかけてくださったり、差し入れをしてくださったりして、「青柳町は本当に良い地域だな」と実感しました。
古賀市のまちづくりイベントにも参加

-大沼さんはどんなイベントに参加されたのですか?
私が参加したのは、「こがのばトーク」と「こがのば実験室」です。こがのばトークは、アートで活躍する方々が集まり、各自の活動内容を発表する場でした。
私も登壇の機会をいただき、全国に当店を知ってもらうだけでなく、誰かが挑戦できる場所としてお店を活用してもらい、コミュニティ形成の場にしていきたいという思いを発表しました。

一方、こがのば実験室は、”やってみたいこと”と”地域に良いこと”を掛け合わせ、小規模でも実行に移すというイベントです。参加者の中には、古賀市をアートのまちにしたいという方がいらっしゃいました。
青柳町がアートのまちの舞台になってくれたらうれしいです。

青柳町は江戸時代、唐津街道の宿場町として栄えた歴史ある地域です。その江戸時代の活気を、現代に新たな形でよみがえらせたいですね。大きな夢ですが(笑)
他にも、青柳町にはスーパーがなく、ご年配の方が不便を感じているそうです。この課題も、協力者を募って解決できればと考えています。
地域に根差したお店を目指しているので、「寄り合い」も企画したいと思っています。これは、一人一品持ち寄った料理を食べながら、濃密な時間を過ごすイベントです。
イベントを通じて仲間や協力者が増えれば、チームでの活動が可能になり、さらに大きな楽しいことができるはずです。やりたいことが多すぎて困ってしまいますね(笑)

大沼さん、貴重なお話をありがとうございました!
ぜひ、こがのば実験室を通して夢を実現していただきたいと思います!
大沼さんが参加された「こがのばトーク」の様子は下記記事からご覧いただけますので、気になる方はご覧ください!