古賀市の日常にワクワクをつくりたい
-まちづくり事業 橋口さんインタビュー

2021年から古賀市が積極的に取り組んでいる、JR古賀駅西口エリアの活性化プロジェクト。
そのプロジェクトを中心で動かしているのが、株式会社ヨンダブルディーの取締役である橋口敏一さんです。

橋口さんは、長年まちづくり事業に従事されていた木藤亮太氏(株式会社ヨンダブルディー代表取締役)と共にJR古賀駅西口エリアの活性化プロジェクトに取り組むだけでなく、実際に古賀市に住み、古賀市の人との交流を楽しまれています。

今回はそんな橋口さんに、「JR古賀駅西口エリア」にかける想いや、これからの古賀市の発展や展望をインタビューしました。

まちに興味をもった幼少期の経験

–橋口さんはどんな幼少期を過ごされましたか?

私は鹿児島県の出身ですが、父親の転勤が多かったので学生時代に3回も転校がありました。
最初は新しい土地での人間関係に悩んだこともありましたが、おかげで自然にその地域に馴染むことができるようになりました。

あとは転校の影響で地図帳が大好きで、小学3年生で県庁所在地をすべて暗記するほどよく見ていました。
今思い返すと子どもの頃から「まち」が好きでしたね。

–いつ頃から「まちづくり」を仕事にしようと思ったのでしょうか?

大学を決める時にデザインとか建築とかを学びたないと思い、福岡の九州大学芸術工学部に進学しました。
そこで勉強していくうちに観光に興味が出てきて「自分が旅した時に楽しいまちをつくりたいな」と考えるようになったんです。
そこから大学の研究室は都市計画や町並み保存の勉強ができるところを選びました。

その後、就職先をどこにしようか考えている頃にちょうど「リノベーション」という言葉が流行し始めて、小倉で使っていない建物をカフェとかオフィスにリノベーションしていたんです。
それを見ていて「建築を1棟建てるよりも今あるものを活用することでワクワクした場をつくることができるリノベーションのデザイナーになりたいな」と考えるようになり、リノベーションの設計ができる建築事務所に就職しました。

古賀市に触れて感じた「これがやりたかった!」という思い

–リノベーションのお仕事を始めて古賀市のまちづくりに関わるまで、どのような経緯があったのでしょうか?

建築事務所で働きはじめた当初は、リノベーションの設計をしていました。
しかし2010年代から福岡市都心部の都市開発が急激に進みだして、気づいたら大型商業施設の基本計画や、パブリックスペースを活用したイベント空間のデザインがメインになっていって…。リノベーションだけでない、多様な賑わいづくりに携わることが増えたんです。
それをきっかけに商空間デザインのノウハウも勉強してみたいなと思って、9年勤めていた会社から、大型商業施設の設計施工を行なう大手の企業に転職しました。

でも、そこでの仕事にまったく合わなくて…
お給料とか福利厚生とかは充実していたのですが、ぜんぜん精神的に幸せを感じられない。
そもそもショッピングモールへの愛が湧かなかったですね…。
そこで「間違えた…」と思いました。
やっぱりチェーン店が並び、どこも同じ空間が広がるショッピングモールより、個性が色めく商店街が好きだし、古いものを活用して新しい価値を生み出す「リノベーション」が好きだったんだなと再認識して、「この先どうしようか」と悩んでいた時に、大学の先輩だった木藤さんに「古賀で一緒に仕事をしないか」と誘っていただいたんです。
木藤さんが、宮崎県日南市の油津商店街で活躍している姿をSNSで見ていたので、連絡をもらってすぐに話を聞きに行きました。

その時古賀の商店街を歩きながら、空いている物件の前で「ここを活用したいんだよね」という話をきいて、「そう!僕がしたかったのはこれ!これがやりたかった!」って心から思いましたね。
それからすぐに会社を辞めて、木藤さんと一緒に古賀市のまちづくりに携わるようになりました。

まちづくりの難しさはその空間の「担い手」をつくること

これまで橋口さんは古賀でどのような取り組みをされてきたのでしょうか?

2年前からJR古賀駅西口エリアの活性化に関わることになり、この2年間は主に空き物件の活用の計画と、一緒にこのエリアを盛り上げてくれる仲間の人材発掘を僕のミッションとして活動してきました。

空間づくりは、正直お金があればできるけど、一番難しいのはその空間を運営していく「担い手」をつくることなんです。
なので長期的にエリアマネジメントできる組織づくりが絶対に必要で、そのために立ち上げたのが「株式会社ヨンダブルディー」です。

古賀市をよくしていける、ワクワクさせられるメンバーを集めるのが一番大変でしたね。

–ヨンダブルディーで今はどのようなことに取り組まれていますか?

今一番大きな事業としては、「るるるる」という施設の運営です。

もとは楽器店と音楽教室だった物件を「食の交流拠点」としてリノベーションし、2023年2月にプレオープンしました。
「るるるる」は、いろいろな飲食店や子どもが遊びながら学べる教室に入っていただき、また、1階のシェアキッチンでは日替わりで多彩なジャンルの料理人やパティシエに使っていただくことで、まずは古賀市の人が「ちょっと行ってみよう」と日常の中にワクワクを感じてもらえるような施設にしたいと思っています。

現状、古賀市内でJR古賀駅周辺がもっとも居住者が多いはずなのに、そこに住んでいる人々がこの辺りのお店をあまり利用していないという課題があります。
古いお店は当たり前の光景になりすぎてしまって、通過してしまうんですよね。
なので「るるるる」に足を運ぶことで商店街をゆっくり歩くきっかけになって、地元に目線を戻して欲しいという思いがあります。
そして福岡市の人や県外から観光で来る人も、「るるるる」を目当てに古賀に来て、ついでに他のお店にも寄っていく流れをつくりたいですね。

–橋口さん自身は「るるるる」にどのような思いを込めているのでしょうか?

この「るるるる」の運営は、自分が関わった空間づくりの仕事の中で、これまでもこれからも自分のキャリアのハイライトになる仕事の一つになるだろうと思っています。

個人的にはこの施設が成功するかどうかで、自分の人生が大きく変わるだろうと感じるほど、自分の中心になっています。
「るるるる」はこの施設だけで成功するものではなくて、JR古賀駅西口エリア全体の活性化の中心になるためにつくられた施設です。
地元の人に喜んでもらいたいですし、出店する店主さんにも「ここでお店を出してよかった」と思ってもらいたいですね。
商店街をよくしなければならないとか、誰かに言われたからではなく、自分にとっての大きな挑戦です。

古い人間関係の中でも感じる若者へのエール

–橋口さんは現在古賀に住んでいるんですよね?

そうです。
最初は福岡市から通っていたのですが、それでは古賀にいる時間がどうしても短くなるし、いつまでも外部の人になってしまうので、2021年から古賀市に住み始めました。
福岡市には20年住んでいたので愛着はありましたが、電車で20分の範囲ですし、それほど抵抗はありませんでした。
最初は、「嫌なことがあったらすぐに慣れ親しんだまちに戻れるし」と思っていたけど、2年たった最近では福岡市に行くことも少なくなりましたね。

–実際、古賀に住んでみていかがですか?

特にお天気が悪い時は、シャッターがしまっている商店街をみると寂しい気持ちになることもあるのですが、商店街の店主さん達がいつも声をかけてくれるので、寂しさを消してくれます。
商店街で暮らしていると、絶対誰かと毎日ぺこっとでも挨拶することになる。同じまちにいる誰かと必ずささやかでもコミュニケーションしながら生活することになる。
これぞまさしく、田園地域でも都心でも、マンションが並ぶ住宅地でもない、商店街で暮らすことの価値だと思っています。
家族でもない誰かが、同じまちの中で自分のことを気にかけてくれるなんて、今の社会においてとっても尊いことです。

JR古賀駅西口エリアの飲食店さんは、このエリアの周辺に住んでいる方々が普段着で通う場なので、都心の居酒屋とは違って、プライベート性が高いことが特徴です。
なので初めて暖簾をくぐる時は、「誰かのおうちに入っていく」感覚が強くて、居心地悪く感じるかもしれません。
しかし、何度も何度も通っていくと逆に自分の居場所にもすることができますし、お店の方や常連の方とも気さくに話すことができます。

たまに飲んでいると説教を食らうこともあってイラっとすることもありますが、今ではその説教も「可愛がってくれているんだな」と思えるようになりました。

–古賀市の魅力はどこでしょうか?

IKEAにも行けるし、160万人レベルの大都会へも20分で通えるし九州で最も利便性が高いまちの一つだと思います。
海がきれいだし、近隣の島も見渡せる景色が最高にきれいです。
古賀市の海は海遊できないので海水浴の人もこないし、きれいな海を静かに楽しめるのが古賀の最大の魅力ですね。

あとは、JR古賀駅西口エリアの飲食店は自分の家の台所みたいな肌馴染みの良さがあるので、一度来てくれればファンになってもらえると思います。

その中でもノミヤマ酒販はおすすめですね。
店主が丁寧にセレクトしたお酒がズラリと並んでいるのもみていて楽しいですし、隣にある角打ちコーナーでは、1人で入っても自然と隣にいるお客さんと会話がはじまるのが魅力です。

130年続く老舗ですが、数年前に今のセレクトショップの業態を始められ、今では古賀市外からも多くのお客さんがお酒選びに来られるようになっています。
個人的には「るるるる」とノミヤマ酒販が、はしご酒のスポットになってくれたらとても嬉しいですね。

将来は良い車で古賀市のドライブを楽しみたい

–今後の橋口さんの展望をおしえてください

今は偶然の縁で出会うことができたメンバーと立ち上げたヨンダブルディーを大切にしなきゃいけないと思っています。
お金がたとえ無限にあったとしても、これだけの熱量で地元のまちづくりに取り組めるメンバーは、他では集められないですね。
ヨンダブルディーをどう育てていくかが、私の40代50代のミッションです。
あとは、良い車を買いたいですね!
今車を持っていないので、車を買ってドライブを楽しみたいんですよね。
古賀市の活性化プロジェクトを成功させて、良い車で好きなまちのドライブを楽しみたいというのが今の夢です。

まとめ

今回は古賀駅西口エリア活性化プロジェクトの中心人物である橋口敏一さんにお話を伺いました。

橋口さんのお話からは、単に新しいものをつくっていくだけではないまちづくりの難しさを感じました。
今まで歴史を築いてきた地元の人と、新しく入ってくる若い世代。
両方の思いを大切にしながら新しい古賀市を模索していく、橋口さんのまちづくりにかける愛情や思いが伝わってきますね。
これから古賀市がどのように生まれ変わっていくのか、とても楽しみです。

橋口さん、お忙しい中インタビューにお答えいただきありがとうございました!